<ArayZ 4月号寄稿>ヤンゴン中央駅の再開発計画は前進するか?
ヤンゴン中央駅の再開発計画は、近年のヤンゴンでの不動産投資案件の中でも目立って規模が大きい。三菱商事やフジタが開発を進める複合施設案件が300-500億円規模であるなか、中央駅再開発は2,700億円規模である。2018年にシンガポール系、ミャンマー系、中国系企業の3社コンソーシアムが優先的な開発権を取得したがその後、中国系企業が本国での財務状況悪化を理由にコンソーシアムを脱退。代わって日系商社の参入などもミャンマー側では噂された。今後の開発の進捗状況が気になるが、短期的には難しいと言わざるを得ない。開発予定地エリアには集合住宅や戸建ても多く、また線路沿いには掘っ立て小屋などが集積し、非合法なコミュニティも形成されている。過去2-3年で下落する不動産市況に於いても、不動産価値の上昇を信じてやまない住民とデベ側の交渉は困難を極めるだろう。
とはいえ本案件を機に軍政時代に、半世紀手つかずであった駅建造物や周辺地域のリノベーションが出来れば、オーナーであるミャンマー鉄道(MR)は莫大な賃料収入を得られる上、老朽化した鉄道網の改善も自社で賄える。本案件の進捗次第で、10年後のヤンゴンの景色は大きく変わるだろう。中央駅周辺に限らずヤンゴンに於いては政府保有の土地や古いビルの建替え需要の拡大から、今後も不動産市場は活性化するだろう。日系企業にとっては、不動産開発への投資、という切り口だけでなく、ミャンマー政府が環境対策を年々規制化する動きがあり、建物の施設管理や省エネソリューションなどでも日系水準のニーズが拡大すると考えられる。
再開発のイメージ図(2018年に開発コンソーシアムが公開)
※本内容の一部は、タイの日本語月刊誌「ArayZ」4月号に掲載されております。リンクはこちらです。
(おわり)
瀧波栄一郎(Director)