<Vol.71 MJビジネス寄稿>ミャンマーにおける日系の進出動向と2019 年の展望
~日系企業にとって市場拡大が見込まれる産業とは~
1. 当初の期待値の高さとは裏腹に、ASEAN他国に劣後したミャンマー市場
弊社MSRでは、日系をはじめとして多国籍な企業のASEAN・ミャンマー投資・進出案件に携わる機会が多い。過去5年を振り返ると、当初の市場開放時は未知なるフロンティア市場として投資熱が高まった。しかしマーケット調査やパートナー企業の選定はスムーズに済んでも、その後の政府機関との許認可などの交渉で苦戦する企業が日系に限らず少なくなかった。
ミャンマー進出後も①市場規模の小ささ ②国勢調査による人口1千万人の下方修正(=将来市場の縮小)、③政権交代に係る外資の様子見により、投資マインドが落ち込む傾向にあった。日系に関しては、上記に加え、一人当たりGDPが2-3千ドルを超え日系水準の産業の裾野が広がるインドネシア、ベトナム、フィリピンなどの存在により、ミャンマー市場は「将来ポテンシャルは認めるが“長期投資対象”」と分類されてしまうケースも少なからずあり、企業内の投資資源を他ASEAN国に振り分ける企業が多いように伺えた。
2. ミャンマーへの注目が再び集まる2019年
2020年には総選挙を控え、一層の外国投資を呼び込みたいNLD政権による数々の外資規制緩和、法整備やMICの手続きの簡易化などを起点に、弊社でも再び案件の問い合わせが増加傾向にある。一例を挙げると、これまでは調査・コンサルティング会社を介しての案件の問い合わせが多かったが、最近では事業会社から直接のご依頼をいただき、役員クラスが直にミャンマーを訪れて、現地企業と折衝などを行うケースが多くなっている。弊社としては、日系企業のミャンマー投資の本気度が拡大してきた顕れと受け止めている。
3. 日系企業にとって市場拡大のポテンシャルが高い自動車と二輪車産業
では今後、日系企業のどのような業種にとって参入のチャンスが広がるのだろうか。 ミャンマーより先に経済発展を遂げたインドネシア、ベトナムを例にとれば、一人当たりGDPを1千ドル刻みに3つに分類ができ、それぞれのフェーズで国内需要が立ちあがる産業がある(図1参照)…(続く)
4. AIや機械化の潮流も踏まえて政策を打ち、外資の投資を呼び込めるか
近年の外資企業の投資動向をみると、保険業、小売・卸売業、不動産業、通信業などといった国内市場を第一のターゲットとした業種での投資が目立ち、縫製業以外の目立った輸出産業の進出が遅れている。政府も製造業誘致を経済課題に挙げているが、現NLD政権では、政権内における人材不足やロヒンギャ問題への欧米からの批判が重なり、国際社会が期待した経済発展はその予想を下回っていると言わざるを得ない。
さらに国際的な産業界のトレンドとなっているAIや機械化の流れにより、新興国間での投資誘致の競争だけでなく、先進国の技術者やプログラマーたちが生み出すAIや機械とも競い合わなければならない …(続く)