米中対立期におけるミャンマー市場の重要性

米中対立期におけるミャンマー市場の重要性

~対中防波堤としての日本の役割と日系企業の参入タイミング~
12.24.2018
レポート
Director 瀧波 栄一郎

1.【ASEAN・ミャンマーにおける日本の役割】

昨今、益々内向きとなる米国は ASEAN における経済的な権力の空白化を招き、結果的に中国の ASEAN 投資に拍車をかけている。歴史的に欧米が近づきづらい ASEAN の軍事政権と上手く付き合いながら、欧米諸国と ASEAN のバランサーの役割を担ってきた日本こそ、これまで以上に経済・政治的な投資を行う期待が国際社会から高まっている。

 

2.【一帯一路と ASEAN】

中国にとって ASEAN は一帯一路の最重要拠点の一つだ。すでにラオス、カンボジア 政権は中国傾斜が過度に進んでおり、中国資本によるインフラ開発が対外債務の大部分を占める。対してタイ、インドネシア、ベトナムではメーカーを中心に日系投資が先行しているため、経済的な中国シフトは短期的には考えづらい。政権交代により中国離れ が進むマレーシアや、逆に中国寄りとなりつつあるフィリピンのように、ASEAN 諸国はそれぞれに中国との適切な距離感を探っている。

 

3.【ミャンマーの地域優位性と中国の狙い】

ミャンマーは中国、インド、東南アジアの中心に位置しており、貿易の要衝として ASEAN では長期的に最もポテンシャルが高く、中国はミャンマー東部ラカイン州のチ ャオピューを戦略的な貿易拠点と位置づけ開発を急ぐ。ミャンマー側は「脱中国依存」 を図るため日本をはじめとした海外勢の投資誘致を考えている。

 

4.【経済水準の拡大と日系企業にとっての参入時期】

今後は縫製を中心とした労働集約型製造業のミャンマー移管の加速及び FOB 切り替 えなど、輸出により外貨が国内にストックされ、国内内需も一層活性化すると期待される。一人当たり GDP が 2,000 ドル超水準に拡大していくにあたり、需要が本格化する 二輪車、軽トラック、自動車、小売・卸売、飲料・食品などの業種が立ち上がるだろ う。また外資企業にとってはチャイナリスクの回避、タイ・ベトナムプラスワンの潮流 に伴い、ミャンマーの重要性は益々高まると考えられる。