<Vol.73 MJビジネス寄稿>ミャンマーにおける給与の最新トレンド
~MSR Salary Survey 2019調査より~
弊社MSRでは1996年からミャンマーにおける給与調査を業界別に実施しており、本年は外資・地場企業など262社への直接のアンケートをもとに「Salary Survey 2019」の販売を6月より開始いたしました。本コラムでは「Salary Survey 2019」より抜粋、最新のトレンドの概要をご説明いたします。
1. アセアンでも引きつづき最低水準
ミャンマーの最低賃金水準は112ドル/月、アセアンなど周辺国のなかでも昨年に引き続き最も低い水準にあり、中国の1/3以下で、米中対立も相まって輸出拠点を中国から移転する労働集約型の企業を中心に魅力度が増してきている。外資企業の製造業誘致における競争国であるラオスやカンボジアでは近年最低賃金が急速に上昇する一方で、ミャンマーでは1日当たりの最低賃金が4,800チャット(2018年Notification No 57/2018)が、引き続き継続される見込み。豊富な人口資源を背景に、ラオスやカンボジアよりも人件費コストでは優位性を持つ。
2. 額面給与は役職に応じて3~18%の上昇。管理職の給与は据え置きも
ホワイトカラーの職種では、役職に応じて概ね前年比の給与上昇は3~18%での調整が多くみられた。弊社調査では、ミャンマーの大手企業に勤務する従業員を1.マネジメント層(管理職)、2.ミドルマネジメント層、3.エントリー層、の3つの段階に分けて平均上昇率を比較すると、ミドルマネジメント層が最も伸びており、平均18%増加した。英語力やビジネス経験のあるミドルマネジメント層は転職市場でも需要が高く、企業側は優秀な人材の離職を防ぐために2割近い給与上昇を実施している。エントリー層は平均10%の増加で例年通り一般的な水準といえる。対してマネジメント層では3%の上昇とやや低調であった。今年は管理職のベース給与を据え置く企業もみられた。国内経済の成長がやや鈍化したため、収益目標などに届かない企業では、責任者の給与は据え置きとなったケースが想定できる。
3. 優秀な人材のリテンションに向けて
企業では人材のリテンションのため、額面給与アップやボーナスの付与だけでなく、教育を兼ねた社員研修旅行、飲食費の支給などの“benefit”を付与することが有用であり実施する企業も多い。これまでミャンマーのホワイトカラーにとって額面給与はもちろん大事だが、それよりも社員と経営陣の連帯性や人間関係を重視する傾向が日本以上にあった。一方で、英語にも堪能な大卒の若手世代においては、キャリアにおける自身の成長を最も重視する。近年、新規参入した外資系が高収入なポジションを提示すれば、躊躇いなくジョブホップを行う大卒若手世代も増加している。日系企業のマネジメント層にとっては、企業の5~10年先を担う社員を引き留めるため、年代や志向に応じた対策が必要であり、弊社の調査データが何らかのヒントになれば幸いである。
Nyana Soe (Deputy Director) / Eiichiro Tonami (Director)
(the end)