2019年ミャンマー小売業界レポート

2019年ミャンマー小売業界レポート

~ミャンマー外資規制緩和の影響とASEANとの比較~
05.15.2019
レポート

1.   ミャンマーにおける小売・卸売の外資規制緩和

2018年5月に小売と卸売で規制緩和が実施され、外資100%出資でも一定の条件を満たすことでミャンマーでの事業展開が可能となった。これまでは、小売はもとより卸売での貿易が禁止されていた。日用消費財を輸入に頼るミャンマーにおいて、外資企業は自社で輸入が出来なかった。昨年の規制緩和で小売・卸売業の活性化が急速に進み始めた。ただし、売場面積929㎡(1万平方フィート)未満の小売業は規制緩和の対象外とされ、日本に於いては200㎡以下が基本のコンビニエンスストアやミニマートは引き続き外資規制の対象だ…(続く)

 

2.  ASEANのコンビニエンスストア競争環境

ミャンマーにおける日系企業の参入余地を見定めるにあたり、ミャンマーだけでなく、ASEAN全体での展開状況を理解する必要がある。そもそもコンビニ業態は米国で誕生したが、1973年にセブンイレブン1号店が江東区豊洲で開業して以来、日本独自の発展を遂げ「日系コンビニ」として、海外市場でも通用するサービス業態となった。その先導役であり、現在も業界では世界#1企業といっても過言ではないセブン‐イレブン・ジャパンの海外店舗数(図2参照)をみると、ASEANではタイに於ける存在感が大きい。タイでは、1989年にCPグループが先駆者的にセブンイレブンのフランチャイズ権を獲得し、セブンイレブンの技術ノウハウと共にタイにコンビニ文化を根付かせてきた。セブンイレブンのライセンス自体は、米国のSeven Eleven Inc.と各国の展開企業がフランチャイズ契約を締結していることもあり、米国人のほとんどは…(続く)

 

3.  ミャンマーにおけるコンビニ事業者の展開状況

2-3年前まではモダンリテール比率は1割といわれていたが、近年コンビニ各社も店舗数を2割近くまで拡大している。24時間営業する店舗もヤンゴンでは一般化してきており、先進国並のコンビニサービスにもみえる。ともあれ、本来“日系コンビニ”として強みを持つべき商品やサービス提供は、現在のミャンマーのコンビニでは十分に提供されていない。 都市型コンビニの主要顧客である“時間に追われるホワイトカラー”はヤンゴンでは近年誕生の初期段階であり、マジョリティとはなっていない。結果として、このようなホワイトカラーを主要顧客とする(日本でいうところの)総菜やおにぎり、サンドイッチなどの中食需要は限定的で…(続く)

 

4.  ミャンマーにおけるスーパー・ハイパーマーケット市場

ミャンマーでは、モダンリテールの約70%をシティマートが握り、ほぼ独占的な地位を占めている。シティマートグループは小売事業の中でも多角化を進めており、中でもスーパー、ハイパーマーケットでは3つのブランドを展開している。City MartはハイパーマーケットであるOceanを、ヤンゴン、マンダレーの二大都市に限らず、ヤンゴンに隣接するモーラミャイン(モン州)やパテイン(エーヤワディ地域)といった地方都市にも店舗を開いている。モーラミャインには…(続く)

 

5.  ASEAN都市とヤンゴンのショッピングモール市場の最新概況

ASEAN各都市では、ショッピングモールの出店競争が激化している。例えばジャカルタでは数年前にモールの過剰供給から、政府が新規出店に規制をかけたほどである。供給過多により、集客力のあるモール(例:Grand Indonesia、Central Parkなど)と集客力が当初から落ち込んだモール(例:FX Sudirmanなど)に分かれ優勝劣敗がついている。ちなみになぜ需要以上に建設してしまうのか理由は様々あるが、一つにASEAN各国のビジネスを牛耳る財閥系企業はいずれも土地を保有しており、収益リターンを得やすい不動産事業の一環としてショッピングモール開発を行う傾向が強い…(続く)

 

6.  ミャンマー・ヤンゴンにおける百貨店市場

ヤンゴンでは現在、百貨店・デパートメントストアと呼べる店舗は皆無である。数年前までは、大手財閥のサージパングループ傘下のFMI社とマレーシア資本のパークソン百貨店が合弁でダウンタウンに開業していたが、サージパンと三菱商事、三菱地所などが同エリアで共同で進める「ランドマークプロジェクト」の再開発のため店舗は現在閉鎖されている。日本だけでなく国内外で、主に富裕層を対象とする百貨店は、eコマースによる購買パターンの変化や、ショッピングモールの台頭による逆風が言われている。それでもショッピングモールとは異なり、高揚感と高級感を顧客に感じさせる高級百貨店の提供価値は今後も揺るぎないものだろう。現在のミャンマーでは …(続く)

 

ミャンマー MSR
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MSR Myanmar Survey Research
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