<Vol.82 MJビジネス寄稿>ミャンマーにおける物流市場のポテンシャル

<Vol.82 MJビジネス寄稿>ミャンマーにおける物流市場のポテンシャル

~年々改善する道路網と地域交通要所の優位性をいかに事業に取り込むか~
03.10.2020
コラム
Director 瀧波 栄一郎

1.ミャンマーでは道路輸送が輸送手段の大部分を占める

国内の貨物輸送においては、水路、空路、鉄道などがあるが、なかでも道路を活用した陸送輸送がミャンマー国内全体の約75%を占める(弊社調べ)。主にミャンマーの道路幅などに適した12 wheeler(12輪大型トラック)が輸送を担い、ヤンゴン-マンダレー間やムセ、ミャワディなどの各国境貿易都市でモノを運んでいる。道路インフラの脆弱性は課題であるが最近では特に、タイ国境ミャワディからヤンゴンにかけてのアクセスはADB、タイ政府、ODA等のインフラ資金により年々改善されている。今後も道路の拡幅や橋の補修を行うことで、コンテナートラックなどが不自由なくアジアハイウェイ1号線を通過できるようになり、より国内の物流網が円滑化するだろう。

 



2. (BtoB)地域交通要所となるミャンマーには周辺国も関心が高い

ミャンマーは5カ国と国境を接し、これら周辺国は何れも、ミャンマーを経由した貿易拡大を思惑する。中国からすると、ミャンマーはアセアン国家の中でもインド洋に一カ国のみで通過でき一帯一路構想でも重要な国。タイとは “タイプラスワン”の流れによりミャンマー国内製造拠点との補完関係(=サプライチェーンの整備)が焦眉の急だ。RCEPから離脱したインドも、ミャンマーや他アセアンとの貿易拡大を経済施策の一つに挙げている。

ミャンマーに拠点を持つ日系物流事業者は、現在はティラワ工業団地とヤンゴンを中心に事業を展開する企業が多い。先5~10年の時間軸でみると、周辺国との交通要所となるミャンマーにおいては、周辺国とのミャンマーを経由した国境貿易増加、国内大都市間での物流サービスへの参入、生鮮品の地方から都市部への輸送(=コールドチェーン)、ラストワンマイル事業者との提携など、様々な切り口での事業展開と課題が想定できる。

 



3. (BtoC)高速バスの空きスペースを利用した“エージェント”の利用も普及

消費者に近い物流では、国内の宅配事業の本格立ち上がりにも注目が必要だ。既に国営のミャンマーポストやSBS、MGLなどの民間の大手配送事業者が国内で配送・宅配サービスを展開している。一方で、国内の都市間の宅配では、民間の高速バスの荷物入れを活用し、宅配サービスを行うエージェントがバス発着点となるバス停に多く存在する。例えば、マンダレーに住む親戚や友人に物資・小包を送る際には、民間配送事業者よりも費用が安く済む。



参考:ヤンゴンからの物資を降ろすエージェントの様子

地方都市モンユアにて2020年1月MSR撮影

 

然しながら送付先の都市に於いて、エージェントが家まで直接配送することはなく、受取人側が、バス停まで取りに行かなければならない。これらのことは法律では認められていない手段であるとされ、いずれはミャンマーポストや民間配送会社利用の方向に一斉に切り替わるタイミングが訪れると考えられる。

 

 



 

 

(おわり)

瀧波栄一郎(Director)