<Vol.81 MJビジネス寄稿>ミャンマー企業とのパートナリング・提携について
~Noと言わないミャンマー企業。相手企業のコミットメントの見極め~
1.ミャンマーでは民間に加えて政府系・軍系などパートナリングが多種多様
日系企業が新興国で事業展開をする際、規制障壁回避や円滑な事業展開のために現地企業との提携で事業展開を行い成功する企業は枚挙にいとまがない。特にアセアンでは財閥系企業/コングロマリットの存在感があり、タイのCP、サハやインドネシアのリッポーやシナールマスなどは日本でも有名である。ミャンマーに於いても、ヨマやシュエタングループなどをはじめとした財閥があり、市場開放以降、外資とのアライアンスを上手く活用しつつ事業を多角化している。
ミャンマーにおけるコングロマリットの特徴を挙げると、先に挙げたタイやインドネシアに比すと、民間企業に加えて国営企業や軍系企業なども一定の存在感があることが特徴的である。そのために日系企業にとってはパートナー候補としての比較検討が複雑化する。
軍系企業を検討する際には、ミャンマーだけでなく欧米での事業基盤と影響も検討しなければならない。欧米では人権団体や宗教団体などが豊富な資金力を背景に、経済界へのロビイングの影響力が強く、実際に自国企業が取引中止に追い込まれるケースなどレピュテーションリスクが潜んでいる。
2. ビックネーム企業との提携は、自社へのリソース配分が不十分となるリスク
産業発展が浅いミャンマーの特徴として、業界大手企業や財閥系の数は限られている。隣国タイでは大手・財閥系企業は60超あり選択肢も豊富だが、ミャンマーではその半分にも届かず企業規模も小さい。最大手といわれる財閥や企業グループの場合、すでに外資系パートナーを複数抱えているだろう。その場合、最大のリスクといってもよいことは、当初の想定していた経営資源を自社に十分に割いてもらえないリスクがある。ミャンマー企業をみていると、社内で新規事業に対し権限を持って実行できる人材が限定的で、同じ人物が複数案件に関わっているケースが多い。パートナー候補絞り込み段階から、ミャンマー側のキーマン(権限者やエース社員)のリソースが、事業開始からどの程度割かれるかは、比較検討項目の上位に入れておくほど重要である。やや前のめりすぎるかもしれないが、タームシートなどに担当者ベースで明確に役割分担を規定し、そのコミットメント度合いを明確に規定しておくことも有効ではないだろうか。
欧米人からは“Noと言わない日本人”といわれるが、ミャンマー人も類同であり、基本的にはどんなリクエストにもYesに近い返答が来る。ただ”Yes, Yes”は”no”を意味していることもあるそうで、この辺りの空気感を読み解けるかもポイントとなる。
(おわり)
瀧波栄一郎(Director)