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2019年ミャンマー二輪車業界レポート

~ヤンゴン走行規制緩和の可能性と日系メーカーのポテンシャル~

2019.4.22

Director 瀧波 栄一郎

サマリー

 

1.   ヤンゴンではASEANでも珍しく二輪車の走行が禁止されている

ミャンマー最大都市のヤンゴンでは15年以上、二輪車・バイクの走行が禁止されている。急激な経済成長を遂げるASEANのフロンティアといわれながらも、最大都市ヤンゴンでは、ホーチミンやジャカルタのようなバイクで街中が溢れかえる混沌さはない。ヤンゴンの街中に平穏さをもたらせている要因の一つに、バイク走行規制を挙げても間違いはないだろう。現在、ASEANでバイク走行規制を敷く都市はヤンゴンしかない…(続く)

2.   ヤンゴンの自家用車を持たない世帯からはバイク活用ニーズが高い

2003年からヤンゴン地方域を構成する45郡区(Township)のうちヤンゴン市開発委員会(YCDC)が管轄する33郡区でバイクの走行が禁止されている(図1)。ヤンゴンのダウンタウンやオフィス街エリア、シュエダゴンパゴダ周辺でバイク走行はほとんど見かけない。一方で…(続く)

3.   バイク禁止は軍事政権時代の名残りで、明確な規制理由は明らかにされていない

2003年ごろに、当時の軍事政権がバイクの通行規制をかけたが、走行が禁止された実際の理由や経緯は明らかにされていない。市民の間では諸説あり、交通安全の確保のためや、自動車が溢れかえった近年では交通渋滞緩和といったものから、当時の軍事政権の高官が、バイクに乗る若者に窓越しに侮辱されたり高官の車を悠々と抜き去るバイクに対して反感を持ったことなどがあげられるが、事実は一部の人間のみが知るところであり、ネピドーへの首都遷都と同様に、一部の軍事政権トップによる判断ではないだろうか…(続く)

4.   2018年にヤンゴンのバイク通行規制緩和の提案が為されたが、反対多数で否決

ヤンゴンでは既に記載の通り、公共交通が不便なエリアでバイク利用が横行しており、ヤンゴン政府も黙認している状態であったが、昨年2018年末からついにYCDCとヤンゴン運輸庁(YRTA)が、バイクの規制見直しについて協議を開始した。
具体的には、公共交通が不十分な地域に関してはバイク走行を認める、南ダゴン、東ダゴン、北ダゴン、ダゴン・セイッカン、ラインタヤ、シュエピタの6郡区を対象に…(続く)

5.  ミャンマーの二輪車市場は二桁台で成長している

二輪車が普及するといわれる一人あたりGDP1千ドルを超えた年が丁度経済開放路線が決まった2011年。以降、これまで急速に普及を遂げてきた。国内の二輪車の登録台数統計でみると、2012年には累計200万台弱であった登録台数が年平均10-20%程度で成長し、2017年には520万台を超えている。実態としては、中国、タイなどから違法に輸出され、登録されていない二輪車も多くあるため、ストックベースでの累計台数はさらに多い…(続く)

6.  ベトナム・インドネシア市場は、ミャンマーの4倍以上普及

ミャンマーとASEAN周辺国とを普及台数の水準で比較する。ミャンマーは、人口1千人あたりの保有率が、約100台(約10%)である。先行するベトナムやインドネシアでは、2017年時点で400-500万台であり、今後ミャンマーがベトナムなどの市場に近づくとすれば、伸び代がある市場とみることができる。
過去3年の平均成長率でみても、タイやマレーシアが成熟化する一方で(1-2%以下) …(続く)

7.  日系二輪車メーカーからみたアジア市場と、競争が過熱するインド市場

大手二輪車メーカーは、世界の二輪車市場の約8割を占めるアジアを重視している。中でもASEANでは、地域最大の約600万台弱の市場があるインドネシアを筆頭に、国内市場も好調であり、輸出拠点ともなるベトナムやタイを重視している。加えて、二輪車では世界最大の市場が形成されているインド市場への投資が非常に活発だ…(続く)

8.  日系二輪車メーカーにとってのミャンマー市場とその魅力

ミャンマー周辺で二輪車市場の競争が激化する中、ミャンマー市場はどういった位置づけなのであろうか。日系の大手4大二輪車メーカーの生産拠点をみると、ミャンマーに生産拠点を持つ企業は未だ一社もいない状況である(図9参照) …(続く)

9.  模倣品の排除や交通安全対策など政府との連携が必要

二輪車メーカーとしては、自社製品の販売増加に向けたマーケティングの強化と同時に、政府への働きかけも必要である。ミャンマー政府と共同で真っ先に取り組むべきは、日本ブランドの名称をコピーする中国製模倣品の排除である。これらは、中国から直接、または、タイなどの第三国を経由し輸入されているが現在のところ特に政府が取り締まる動きも聞こえていない。政府当局と取り締まりを強化し …(続く)

10.  ヤンゴンにおける二輪車規制緩和は経済活動の起爆剤となり得るか

ヤンゴンにおけるバイクの規制エリア緩和・拡大が実現すれば、中間層以下の世帯の消費活性化につながる。バイクは、一人当たりGDP1~3千ドルの新興国の庶民にとっては欠かせない「脚」として経済を底から支え、彼らの経済活動にも密接に結びついている。
現在のヤンゴン中心地では、公共バスの運行が止まる20時以降、居住者が少ないエリアは静まり返り、自動車を保有する世帯しか外食などを楽しめない。バイクが活用できるようになると、気軽な買い出しをはじめとして、帰宅時間を気にせず外で過ごせ、消費活動の活性化につながるのである。
 バイクとは本来、自動車やバスなどとは異なり、より自由な移動手段として世界中の若者たちから愛されてきた。歌手尾崎豊の「15の夜」ではないが、若者にとってバイクとは “自由”を得るための象徴の一つなのである…(続く)

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